文書

 

 

17歳

女、女、女しかいない高校での生活を謳歌していた。

床には長い抜け毛の多いこと多いこと

体育の授業の後となれば制汗剤の霧もや立ちこめるジャングル

聖歌隊と聞きまがうかのような校歌斉唱

 

中学生の頃、国語の教師が「男子しかいない、女子しかいないって経験はあとにも先にもなかなかできないことだから。ぼくは別学をすすめるよ」

と言っていたのをおもいだす。わたしもほんとそのとおりだと思う。

女子校よかった。母校よかった。とたくさん思っている。

 

えらそーな長に立候補しちゃったりして、ぶいぶいいってたわけだけど、典型的な発育途上の若者さながら”モラトリアムと格闘”していた。通学の電車の中でやけにセンチメンタルになってしまって、それこそセンチメンタル過剰って感じで「このモヤモヤするきもちをどうすればいいんだろう」と考えあぐねていた。

今もあんまり変わらないけれどどんどん考え事が膨らんでいって楽しくなってきて歯止めがきかなくなって爆発しそうになる。ロックミュージシャンはこういう気持ちのときにギターをかきならすのだろうか。何もせず、漏れ出る笑みをこらえつつも口角が上がってしまっている残念なわたしであったが、ブログに思っていることを書けばいいのだ!と空気抜きの糸口をみつけた。

 

ブログが流行っていた。

携帯電話で個人ブログをつくって、ダレと遊んだだとか何たべただとかアレかわいーだとかを毎日綴るのだ。

友達のブログを毎日チェックするのには飽き飽きしていたが、峯田和伸の★がぶがぶdIEアリーは毎日欠かさず更新をチェックしコメント投稿なんかしてた。

わたしのブログを定期的に読んでくれる人は少なかったけれど、それでも読んでくれる友達がいた。

ある日、「電車のボックス席のクッションがずれていたのを見つけ、席の下は車輪ではなく異次元空間につながっているのではないか」という記事を長々と書いたら友達が「いい文章だった。あなたのこうゆうこと考えるとこすごい」といってくれたことがとても嬉しくて本人はとっくに忘れてしまっていると思うけどわたしはいまだに覚えている。

ブログを消してしまったことがくやまれる。

 

忘れもしない高校2年生、冬がはじまるころ

どうやってたどり着いたかは覚えていないが、iモードの電波上で衝撃的な出会いをする。

何て名前のひとだったか忘れちゃったけど、おそらく大学生のお兄さんで名古屋のひとだった。

ブログで物語を書いていて、ブラックホールのごとくその魅力に引き込まれなんどもなんども繰り返し読んだ。

傘男っていう男子高校生が主人公である。傘男の親友メロン、バックギャモンとの日常を描く。

メロンはちょっぴりワルでスラムダンクの水戸っぽいイメージ

バックギャモンははちゃめちゃな奴で登校シーンの段階で3回くらい死ぬ。

だいたい登校中になぜかバイクを改造した戦車とかで現れるバックギャモンのせいでおかしな世界に迷い込んで、そこで傘男の好きな女の子と一悶着あったけど無事に元の世界に戻ってきて一件落着のような話だったと思う。

まずネーミングからして傘男(かさおってよむの?)、メロン、バックギャモンてすごすぎる。バックギャモンでサメの歯みたいな盤面のゲームだよね。メロンってだいぶスイートな名前だけどわたしは作中の彼にメロメロだった。

傘男には好きな女の子(名前が思い出せない)がいて、いつも悶々としている。女の子とのそっけないやりとりが女子校のわたしにはリアルすぎて人の創作物から共学の空気感を学んでいた!

作者のお兄さんに感想を送ると、返信がきて嬉しかった。

お兄さんは名古屋にすんでいる人で、「ぐらんち」というバンドを組んでいた。

mp3で音源も視聴させてもらったんだ。

「ぐらんち」は名古屋のKDハポンてとこでライブをやるって。そこではじめてKDハポンのことを知ったわたしは、いつかぜったいKDハポンに行くのだ!と目標を立てる。いまだに訪れたことはないけれど、わたしにとって、思い入れのある、懐かしの、そして憧れの場所なのだ。

家と学校の往復しかしてなかった田舎の高校生は、傘男ブログのおかげで世の中にこんな趣味多彩で面白い人が実際にいるんだと知り、空って、広いんだなと思うようになりました。

 

404 not found は突然やってきた。

ある日、傘男ブログから作者に関する情報まですべて突然きえていた。

ブックマークを何度更新してもページが出てこない。

なにかのエラーかと思って数日後も開いてみたけどやっぱりだめだ。

しばらくショックだった。食事は喉を通りましたけど。

インターネットで「傘男 メロン バックギャモン」で調べたりしたけど全然ヒットしない。

すごいおもしろかったのに認知度低くて知ってる人もいない。

自分だけの秘密にしていたけれど、もっと友達に布教しておけばよかったと後悔する。

 

作者のお兄さんは今どこで何をしているだろうか。

あれから7年経つけどたまにフワッと思い出して「傘男 メロン バックギャモン』でググっています。バックギャモンのゲーム盤の通販サイトとかしか出てきません。

自分の考えたことを文にして表現するということは、簡単そうでいてとても難しいことです。わたしは読書感想文で「〜思いました」と「〜感じました」を交互に連発してしまうタイプでした。

なのでお兄さんの書く文書が枠がなくて、自由で、だいすきでした。



最近気づいたのですが、「感想」と「感情」って違うんだ。

湧いた気持ちを言葉にすると、

おもしろい

たのしい

かなしい

という形容詞ばかりになる。

これらを伝えるために「感想」かあり、感じ、考えたことを文にしてあらわすんじゃないか。

こんな単純なことに気がつくのに何年かかったんだわたしは。

しかし、この「感じ、考えたこと」の言葉をなめらかにつなぎ、文章にするというのはこれまた困難であるので、世の中の文章を巧みに操る人たちには感服します。

 

きっかけがあって、自分が作る、長い文章を書くことへのつっかかりが取れたので、ブログブログしようと思ったのです。

ずっとお兄さんと傘男のことを何かに書きたかったのです。


 

すこしすっきりした 

 

 

ぐらんちというひとのにっきのはなし